第三十二話 新生活のはじまり?

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──住宅街を抜けると、すぐに駅が見えてきた。自宅から駅までは思っていたよりも近かった。 改札口を抜けてホームへと降りてから、あたしはずっと考え事をしていた。それは昨日…楓さんに言われた一言。 『あんなことをしちゃったからね』とニコニコと笑っていた。勝手な憶測だけど、たぶんあたしは士騎さんにとんでもない事をしてしまったに違いない。だから、病室でも目を合わせてくれなかったんじゃないかと。 だから、謝らないといけない。何をしたかは…知らないんだけどっ。ちゃんと謝って仲直りして…そして、あの笑顔をまたみたい。 あの胸がキュンキュンする心地のいい気分にさせてもらいたい。 よし!謝ろう! 「──あ、あの!」 「ど、どうかした?急にデカイ声なんかだして」 「聞いてほしい事があって…。えっと、その…あたし自身が覚えていないのに、こんな事いうなんておかしいんですが──」 謝りかけようとした…まさにその瞬間だ。 『──二番線に列車が入ります。黄色い線の内側までお下がりください』 電車の到着を知らせる放送によってかき消される。 「お、そろそろ来るみたいだな。あ~…で、さっきの話なんだけど…聞いてほしいことって?」 「あ、や、やっぱりいいです!」 ぐぅ…あたしの意気地なし。完全にこの放送のせいで謝るタイミングを見逃した。 はぁ~…というため息と共に電車に乗り込んだ。
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