恋じゃない。

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お父さんの携帯が夜に鳴り出す時は大抵ロクでもないことが起こっている。 それが我が家の暗黙の了解だった。 ため息と共に携帯を片手にリビングを後にするお父さんの姿を、何度見ただろう。 そして戻ってこない。 行き先は警察だったり駅前だったり。 お父さんの携帯が夜鳴るようになったのは、私が中学生になってからだし、お父さんが夜に家にいないからといって、寂しいと思うような年齢はもう過ぎていた。 ただ嫌だなと思ったくらい。 反抗期らしい反抗期もなかった私は、お父さんのことが嫌いじゃなかったし、単純にお父さんに迷惑をかけるその存在を憎らしく思っていた。 それはお父さんも同じだったと思う。 そして事あるごとにこう言うようになった。 「陸南工業高校の生徒には近づくな」 そんな私のお父さんは陸南工業高校の教師になって今年で五年目だ。
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