恋じゃない。

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陸南工業高校は家からは二駅離れた場所にあったから、私がその高校を実際目にしたことはない。 ただ陸南高校の生徒は見たことがある。 私は自転車通学だったけれど駅の前を通って行くから、電車から陸南の生徒が降りてくる場面にはたまに出くわす。 彼らを実際目にするまでは、陸南に通ってる生徒は全員超がつくほどのヤンキーで、目が合えば必ず絡まれると思い込んでいた。 だってお父さんの愛車だったレクサスのボンネットがぼこぼこになっていたり、お父さんの悲しそうな顔を見てきたから。 だから近くを通ればすごい勢いで目を逸らし、うつむくことに専念したし、自転車をこぐスピードも早くした。 そうして意識しまくってるのは私だけで、実際彼らからしたら私なんて道端のアリンコと同レベルに違いない。 陸南の生徒は想像していたヤンキーとは少し違って、見た目が派手なチャラい人達って感じだった。 だけど中学から私立の女子中に通う私に男子への免疫なんてあるはずもなく、ヤンキーだろうがチャラ男だろうが、苦手な分野であることに変わりはなかった。 お父さんが苦労している別世界に私が足を突っ込むことは絶対にないだろう。 その日の帰りまで、私は本当にそう思っていた。
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