恋じゃない。

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自転車置き場でミコちゃんと別れる。 絵の具セットとカバンを前カゴに入れると、私はいつもと同じように自転車をこぎ出した。 美術部に所属している私は、放課後美術室で絵を描いていくことが多いけれど、今日はポスターのモチーフにしている裏山の木を見ながら色をつけるつもりだった。 仕上げの色が上手く出ない。 テーマに合う温かい色合いが必要なのに、イメージして作ると今度は実物と離れていってる気がする。 だから今日は実物を見ながら一人でじっくり色を塗るつもりだった。 自転車で10分ほどこぐと、最寄りの駅前を通る。 駅前にはたいてい陸南の制服を着た子達がいるので、いつも緊張の一瞬だった。 なるべく下を向いて、頬にかかるセミロングの髪の毛で表情を隠して。 いつもみたいにスッと通り過ぎる。 心の中でそんな自分をシミュレーションしながら自転車をこいでいたのに。 突然スカッと足にかかる負荷が軽くなったかと思うと、次の瞬間にはシャーッとチェーンが軽やかに回る音が聞こえた。 そして次の回転からは、こいでもこいでもタイヤに動力が伝わらなくなった。
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