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霧が足元をうっすらと覆う木々の中を少女は駆け抜けていた。時折後ろを振り返っては追いかけてくる“あれ”を確認し、どうすればよいか悩んでいた。
「くそっ!なんでこんなにしつこく追い回してくるのだあいつは!」
「しかたないでスね。大体そこら中に爪のマーキングがあるにも関わらず縄張りにズカズカ入り込むアナタの方が悪いんでスよ」
「うっさいゼラチン体!私がここで死んだら、一生呪ってやる!」
全力で走る少女の後ろには、昔存在した熊によく似た生命体ーーいわゆる魔物が、少女を追っていた。
少女は頭の上に乗るゼラチン体の魔物と口論しながら、辺りをキョロキョロ見回し、この状況の打開策を探す。しかし、着実に魔物は迫ってきており、彼女に残された時間は少なくなってきた。
(このままではまずいな…死んだら元も子もないし、使うか…)
彼女がそんなことを考えた時
「っ!うわああああああぁ!」
霧のせいで見えなかった斜面を踏み外し、彼女は勢い良く下まで転げ落ちていった。
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