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あれから月日が経って、とうとう明日には許婚と結婚というところまできてしまった。
最早この結婚をなかった事になんて出来やしない。
あの日から光には避けられ、連絡も繋がらなければ顔も一切見ることは出来なかったけど、最後の悪あがきで光の家のポストに手紙を残した。
内容は簡潔に明日には結婚してしまうことと、ずっと言い出せなかった謝罪。そして最後に『ずっと傍におること出来んけど、心だけは光の傍に居させて下さい。勝手ですまん。ありがとう。ずっとずっと愛しとる。』なんて陳腐な文章。
俺の精一杯の気持ちを綴ってみたらこんなのしか出ないのかと笑った。
光にとっては迷惑だし、こんな事ただの自己満足だって分かってはいるけど、結婚を決心するために最後の心残りを無くしたかった。
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帰って来た家はシン…と静まり返っていて自分の衣服が擦れる音と靴音以外は聴こえない。
両親は明日の式についての最終確認でも行っているのだろう。
俺も参加しなくてはと思うけど、手紙を置いてきたことに思いの外疲れを感じていたらしい。
緊張が解けて部屋に入った瞬間ベッドへと倒れ込む。
少しだけ仮眠しようとそのまま瞳を閉じたら、自然と睡魔が襲ってきた。
薄れていく意識の中で『手紙、読んでくれるやろうか…?もし、もしも迎えに来てくれたら俺は…』とまで考えて、未練たらしいなと苦笑した。
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