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「な、で…ここにおるん?」
「なんでって…今日は午後に逢う約束してはりましたやん」
確かにこの会談が終わった後、俺は光と逢う約束をしていたのだが……
「とぼけとるんスか?…そんなんやから親父さんに怒られるんや。」
「怒られ…?」
「俺が来る前、なんや誰かと会っとったらしけど、アンタずっとボケーとしとったらしいやないスか。それで親父さん、なんや怒ってはりましたよ」
「あ…やっば!」
目の前のことに柄にもなく現実逃避なんかしてたから、いつの間にか会談は終わっていたようだ。
「はぁー…ほんまアンタは変わらんスわ…まあそんなとこが好きなんやけど」
呆れつつも口端を上げて微笑む光にアホ…と小さく呟くことしかできなかった。
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あの後光を部屋に連れて行き雑誌読んだり、懐かしい昔話などに花を咲かせたりしてゆっくりとした時間を過ごしていた。
昔はスピード命みたいに何でもかんでも速く速くと動いていたけど、大人になるにつれて少しずつ余裕のような…ゆっくりとした時間も悪くないと思いはじめていた。
まあスピード命なのは変わらんけども。
床に腰を下ろしてベッドに背を預けてる光が後ろを振り返りながら俺の名前を呼んだ。
ん?と返事して顔を向けると
「無防備」
ちゅっと小さなリップ音と共に温もりが唇に落ちた。
急な事に顔が赤くなるのは仕方ない、だって今だになれないのだから。
甘い雰囲気にお互い指を絡ませて、再び顔を近づけようとしたら――…
コンコン、
「謙也、ちょおええか?」
父親の声と扉のノック音に二人して勢いよく離れる。
そのことに吹き出して、抑え気味に笑いながら、おん大丈夫やで~と父親に返事を返した。
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