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さよなら、どうか幸せに
ああ、いってしまった…。
よろめきそうになるのを何とか止める。
ぐっと足に力を入れて立つ俺は、にこやかに笑う父親を本気で恨めしく思った。
「めでたいやろ~光くんもお祝いしてや」
空気が読めないのか父親はそのまま陽気に話を進めて光の背中をバシバシ叩く。
それに俺はオロオロするが光の表情は見えなくて、黙って叩かれている。
俯きながら黙り込む光に、俺は焦りながら父親を部屋から追い出そうとした。
「おとん、ちょお出てってやっ!!」
「お、おいっ急になんやねん!」
「ええからっ早う!!」
戸惑う父親の背中をぐいぐい押して勢いよく扉を閉める。
カチリと鍵もしめて俺は気まずい雰囲気の中、光の方へ振り返った。
「ひ、光、あんなっ」
「…許嫁て誰なんスか」
「…っ」
俯いたまま低音で聞いてくる光。
俺は息を詰まらせ唇を噛んだ。
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