呪い

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給湯室から出ていく玲子の姿を涙目で追いながら、中田は先程よりもズキズキと鈍痛のする薬指を左手で握り見送った。 痛みが幾分良くなって、自分のデスクに戻った中田だったが、風呂敷を開けて、中に入っていた銅鏡を見たとたん、 経理の澤村美保と、自分が近いタイミングで、同じ箇所に怪我をした事が気になり、定時の5時になるまで仕事に身が入らなかった。 普段なら定時帰宅する部下を尻目に、何だかんだと1時間程残業をするのが日課だった中田だったが、今日は定時で仕事を上がる事にした。 自分の部署から出て、エレベーターに向かう途中も、自分のカバンの中に入れた銅鏡がきになる。 呪いなんて信じてはいなかったが、銅鏡を見たとたん怪我をした事実が中田を不安にさせていた。 大きくため息をつき、エレベーターに乗ると、 「部長!ちょっと待ってください!」 と声が聞こえ、声の先に視線を移すと、澤村美保が、カバンを持ってこちらに走って来る姿が見えた。
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