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森に囲まれたこの家は四方を木々にさえぎられ、小道が一本有るのみだった。
其もまた草木が変化し屋根の様に先端がカーブしドーム型になっている。
「ただでさえ木で日の光が入りにくいって言うのに……いい、ちゃんと暗くなる前に帰ってきなさい。
わかった?」
少年は一言「はい」とだけ小さく呟くと女は家へと入っていった。
庭には老婆と少年の二人となった。
すると、うつむいていた少年の顔が老婆を見た。
「おばあちゃん……母さんは僕の事、嫌いなのかな?」
幼い少年の哀しげな顔が老婆には切なく見えた。
「違うよ、お前の母さんはちゃんとお前が好きだよ」
「じゃあなんであんなに僕を叱るの?」
老婆は辺りを見渡し「そろそろ暗くなってきたね」と言い家の戸を開けた。
「ババの部屋で話そうか」
少年は黙って家へと入った。
また椅子に座ると老婆は少年の伸びた前髪を優しく払った。
「しのは中学校……たのしいかい?」
「うん。 楽しいよ、部活も慣れたし友達とかもできたし」
ニコッと笑う少年はどこか楽しそうだった。
「そうかい……楽しいかい。
でも、しの決して帰りが遅くなってはいけないよ」
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