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「なぜだか解るね?」
少年はうなずかなかった。
「しの」
「死神何て信じられないよ」
この家には少年と母と祖母しか居なかった。
其の母と祖母に小さい頃から言われ続けられた事がある。
『暗くなる前に帰ってきなさい』
優しい祖母ですら口を酸っぱく言うこの言葉。
其れにはこんな意味がある。
この森のどこかに死神が住まうと。
現世から切り離される闇夜のうちに死神が森を渡り歩き仲間を捜すと言う。
だから、闇に包まれる夜は外に出てはいけないよ。
***に連れ去られてしまうから。
「僕、こんな家嫌だよ。
友達とも遊べないなんて」
少年は小さな背中を更に小さく丸めた。
確かに思春期をむかえる少年には酷だろう。
「わかっておくれ、しの」
「……おばあちゃんは***何て本当に居ると思うの?」
「ああ、居るよ」
少年は「見たことあるの?」と聞くと老婆は深くうなずいた。
「ババの父親が連れていかれるところを……ババは両目でしっかり見たよ」
刻まれた目元のシワが涙で濡れていた。
「いいかい、しの。
***に会ったらあの世へ……引きずり込まれるんだよ
それでも外へ出るかい?」
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