19人が本棚に入れています
本棚に追加
――三年後――
「しのっ!
いい加減にしなさい。ここを出るってどういう意味なの!」
黒髪の長身を紺の制服で覆い、彼は大きな荷物を片手に玄関に居た。
「そのままの意味だよ。この家を出る」
彼は冷たく言うと、取っ手を回した。
「だから、その理由を聞いているのよ」
「そんなの決まってんだろ! 俺だって高校だぜ……いつまでも門限とか面倒なんだよ」
怒鳴るように言う彼の気持ちもよくわかる。
むしろ今までよく耐えたとさえ言える。一度の人生縛られ続けられるなど。
「しの……」薄暗い廊下から悲しそうに老婆がしのを見た。
「行くなら明日にしなさい。夜は死神が……」
「それがウゼーつってんだよ」
勢いよく扉を開け闇夜へと消えていった。
「しのっ!」
老婆は追いかけようとする女の手を強く握っりひき止めた。
不思議な事に開いた扉が勝手に閉まり、まるで家から出るなとばかりに
鍵がガチャリと音をたててしまった。
そして老婆には出ていった彼の後ろに人影を見ていた。
むろん老婆は其を死神と確信していた。
最初のコメントを投稿しよう!