101人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は私の前にしゃがむ。
体の色素が薄いのか。
肌はとても白いし、髪は黒というよりチョコレート色に近い。
それは酷く可愛らしくて儚げだ。
「自分の方が怖い目にあったのに、俺の心配してくれてんだ」
どう見ても、少女にしか見えない頼り無さげな華奢な体。
「大丈夫だよ」
真っ直ぐに私の目を見つめるブラウンの瞳。
けれど、その中に見付けてしまった。
「俺は男だから」
強い意思の力。
その力に。
私の中の何かが、ギュッと捕まえられた。
「あの……」
「さてと、ここもそろそろ離れた方がいいかな」
彼はそう言って立ち上がると、手を差し出した。
自然とその手を握り返す。
「……」
立ったら、彼のつむじを発見してしまった。
何だか傷付いた。
「あの人達、追い掛けてくるかな?」
「いや、アイツらじゃなくて……」
「いたぞぉぉーーっ!」
振り向くと、さっきの上級生ではない、別の男の子達が数人こっちに向って走ってくる。
「ヤッバ。逃げるよ、吉野さん」
「え……うわっ」
彼は私の手を掴んだまま、再び駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!