菜摘さんと陵汰くん。

10/24
前へ
/40ページ
次へ
彼は私の前にしゃがむ。 体の色素が薄いのか。 肌はとても白いし、髪は黒というよりチョコレート色に近い。 それは酷く可愛らしくて儚げだ。 「自分の方が怖い目にあったのに、俺の心配してくれてんだ」 どう見ても、少女にしか見えない頼り無さげな華奢な体。 「大丈夫だよ」 真っ直ぐに私の目を見つめるブラウンの瞳。 けれど、その中に見付けてしまった。 「俺は男だから」 強い意思の力。 その力に。 私の中の何かが、ギュッと捕まえられた。 「あの……」 「さてと、ここもそろそろ離れた方がいいかな」 彼はそう言って立ち上がると、手を差し出した。 自然とその手を握り返す。 「……」 立ったら、彼のつむじを発見してしまった。 何だか傷付いた。 「あの人達、追い掛けてくるかな?」 「いや、アイツらじゃなくて……」 「いたぞぉぉーーっ!」 振り向くと、さっきの上級生ではない、別の男の子達が数人こっちに向って走ってくる。 「ヤッバ。逃げるよ、吉野さん」 「え……うわっ」 彼は私の手を掴んだまま、再び駆け出した。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加