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あの時の高揚感は、陵汰が出場するサッカー部の試合でも感じるようになり。
その姿に魅了される女は跡を絶たたず、彼の周囲にはいつも大勢の女がまとわり付いていた。
私は、あれからずっと陵汰との距離を縮めるよう努力してきた。
彼の周りにいる女とは一線を引き、彼女達とは違う立場をとった。
あの子達はただのファン。
私は『仲の良い』女友達。
今では、陵汰がどんな女と付き合っていようと、誰と付き合っていようと、1番近くにいる女は私だ。
このタイミングで間違いない。
そう思った。
だから、3日前……
***
終業式が終わった直後の体育館。
生徒達は、これで夏休みに突入するという開放感でいっぱいだ。
ぞろぞろと教室に戻る集団の顔は明るい。
陵汰は同じクラスの大輝と、数名の女子生徒と話しながら体育館を出ようとしていた。
「陵汰」
体育館の出口の傍で声を掛けたのは菜摘だった。
この頃すでにクールビューティーと言われていた吉野菜摘だったが、陵汰に対しては柔らかな表情を見せていた。
この時も他の人間には希少な微笑みを携えている。
「話しがあるんだけど」
「分かった、ちょっと待っててー」
特に変わった様子もな い。
普段通りの吉野菜摘。
陵汰にはそう見えていた。
「悪い、先に行ってて……」
「大丈夫、すぐ済むから」
大輝達にそう言いかけたが、菜摘に静止された。
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