菜摘さんと陵汰くん。

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陵汰と菜摘は、友人達と他の生徒達の視線を集めながら扉の横に立つ。 菜摘は、多くの注目を浴びていることを分かっていた。 これでいい、むしろ好都合だ。 「私と付き合って下さい」 それは全生徒へ宣言するような告白。 これから、この男は…… 「俺でいいの?」 「陵汰がいいの」 「ありがと、すげー嬉しい」 この男は私の物。 1学期最後の日だったが、高原陵汰と吉野菜摘が付き合い出したことは全生徒が知ることとなった。 *** その日の夕方。 冷房の切られた教室の中で、蒸し暑さと一緒に陵汰を待つ。 開け放たれた窓からは、少しも風は入ってこない。 手にしていた文庫の2/3を読み終えたところで教室のドアが開く。 「ごめん、練習長引いた」 部活を終えた陵汰が立っていた。 「お疲れ」 今まで待った3年間と比べたら、たった数時間待つことくらい大した事はない。 「帰ろ」 今では私よりも10cm以上大きくなった陵汰の隣に並ぶ。 これからはずっと私が隣にいるんだ。 「どっか寄ってく?」 そう聞かれて、少し考えるふりをする。
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