菜摘さんと陵汰くん。

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「あのね、欲しいものがあるの」 「買い物?いいよ、付き合うよ」 「違う」 「ん?」 欲しいものは。 陵汰。 「こんな男で良ければいくらでも」 『いくらでもあげるよ……菜摘』 そう言って、彼は私を抱いた。 違う。 私が陵汰を抱いたんだ。 『菜摘』 久しぶりに菜摘と呼ばれた気がする。 いつからか、陵汰は私を呼び捨てにすることはなくなっていて。 『菜摘ちゃん』と呼ばれるたびに、腫れ上がってしまうのではないかと思う程胸が痛んだ。 エアコンの冷たい空気が部屋を包む。 けれど溢れ出した気持ちが、体を冷ますことはない。 体中が熱い。 やっと陵汰が私のものになった。 「あっちー。エアコンの温度下げていい?」 陵汰は私の上に覆いかぶさると、ベッドの下に転がっていたリモコンに手を伸ばす。 「暑がり」 「スンマセン」 エアコンに向けようとした手からリモコンを奪い取る。 「下げてもいいけど」 「いいけど?」 首に手を回して日に焼けた顔を引き寄せた。 重ねた唇は優しく私の欲を満たしてくれる。 「分かった」 片方の腕で背中を支えられ、ゆっくりベッドに倒された。 陵汰のことなら何でも知ってるつもりでいたけど、今日初めて知ったことがある。 高原陵汰は中毒性が強い。
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