101人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのね、欲しいものがあるの」
「買い物?いいよ、付き合うよ」
「違う」
「ん?」
欲しいものは。
陵汰。
「こんな男で良ければいくらでも」
『いくらでもあげるよ……菜摘』
そう言って、彼は私を抱いた。
違う。
私が陵汰を抱いたんだ。
『菜摘』
久しぶりに菜摘と呼ばれた気がする。
いつからか、陵汰は私を呼び捨てにすることはなくなっていて。
『菜摘ちゃん』と呼ばれるたびに、腫れ上がってしまうのではないかと思う程胸が痛んだ。
エアコンの冷たい空気が部屋を包む。
けれど溢れ出した気持ちが、体を冷ますことはない。
体中が熱い。
やっと陵汰が私のものになった。
「あっちー。エアコンの温度下げていい?」
陵汰は私の上に覆いかぶさると、ベッドの下に転がっていたリモコンに手を伸ばす。
「暑がり」
「スンマセン」
エアコンに向けようとした手からリモコンを奪い取る。
「下げてもいいけど」
「いいけど?」
首に手を回して日に焼けた顔を引き寄せた。
重ねた唇は優しく私の欲を満たしてくれる。
「分かった」
片方の腕で背中を支えられ、ゆっくりベッドに倒された。
陵汰のことなら何でも知ってるつもりでいたけど、今日初めて知ったことがある。
高原陵汰は中毒性が強い。
最初のコメントを投稿しよう!