菜摘さんと陵汰くん。

8/24
前へ
/40ページ
次へ
「あのさ、俺ら同じクラスだよ」 「えっ」 「ひでー」 そう言えば、さっき彼は。 『俺は1年D組高原陵汰。覚えとけ、バーカ!』って叫んでたっけ。 数少ない友人に、もっと他人に興味を持てと、私は注意されることが多い。 「ごめん、高原君」 「リョッピーでいいよぉー」 「それは嫌」 「ヒドーい、さっきから吉野さんヒドいよー」 高原君は、整った顔をクシャリと歪めた。可愛い。 「ねぇ、どうして私の名前知ってるの?」 「俺、女の子大好きだもん。クラスの女の子の顔と名前は初日に全員覚えた」 「あそう」 けど、ウチのクラスで誰よりも可愛いのは、きっとあなただよ。 私は愛らしい美少女……ではなくニコニコと私を見上げる小柄な少年を見つめ返し、ため息を吐き出した。 この子は、人を脱力させるところがある。 さっきまでの緊張感は、どこに行ってしまったのだろう。 さっき…… 「あっ」 彼は、あの上級生達に名前と学年とクラスまで言ってしまっている。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加