閉鎖病棟

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暗く真っ直ぐなリノリウムの廊下、閉鎖病棟に続く鉄扉の前。 笈川は左手で懐中電灯を持ちながら、右手で鍵束のうちのひとつを鍵穴に入れ、重い扉を押し開けた。 中に入ると、笈川は閉められた扉を背にして靴を脱ぎ、靴底を捲る。 その奥には、銀色に光る二本の鍵が入っていた。 懐中電灯で照らしてそれを確認すると、素早く靴底を元に戻した。 再び履いて、つま先を床でとんとんと軽く叩く。 全ては細心の注意を払って行われ、無駄がなかった。 静まり返った廊下を進む。 夜中二時過ぎということもあり、患者たちはベッドに横になっていた。 眠れない者もいるが、彼らは夜中に何度も看護師が睡眠チェックのためにやってくるのを知っている。 笈川も、看護師のようにそれぞれの個室を見て回った。 時折うなり声がするが、彼を不審がる者は誰もいない。 懐中電灯の丸い光はぐんぐんと奥へ進み、ついに六宮の鉄格子を照らした。 と同時に、うずくまる黒い影をもその端に捉える。 まるで、六宮の部屋を守るガーゴイルだ。
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