閉鎖病棟

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「それと、六宮君に密かに会いに行って目を刺された件だけどな。 さっき君は、どうしてオレを疑ったんだっけ?」 「どうしてって……六宮さんは問題がないし、他の患者さんよりも、よっぽど落ち着いてるのになって。だから、夜わざわざ彼を見に行くなんて、不審だなって……」 「違うね」 あまりにもすっぱりと切り捨てられ、小暮は狼狽した。 自分が散々疑われていたときはあれだけにこにこしていたのに、患者のこととなると、その表情は一変する。 「看護記録を見たかい? それに、オレもあのとき言ったはずだよ。彼は確かに従順だったけど、食事を全然摂ってくれていなかったんだ。抑制帯を外すまでは、胃が圧迫されるからといって、水すら飲んでくれなかった。それに、睡眠表を見ても分かるが、彼はほとんど寝ていない。 分かるかい? テレビ局に乱入してからオレが注射を打つまで、ずっと暴れっぱなしだったんだよ。なのにほとんど眠らず、食事も摂らなかった。 こういう人が危ないんだよ。突然死の可能性が高い」 笈川は諭すように、一言一言はっきりと言った。 小暮は言い返す言葉もなく、ひたすら俯いている。 笈川は正確に患者の状態を把握していた。 彼が不審に思えたのは、何のことはない、小暮自身が未熟だったからなのだ。 「僕……先生に教えてもらう資格ありません。何をやっても空回りして、あげくに先生まで疑って。もう救い様がないです……」 「まぁた変な方向に反省して。どうせなら、二度と同じことはするもんかって奮起しろよ」 「はい……すみません」 笈川は金網から手を放すと、軽く伸びをした。 ゆっくりとした足取りで入り口の扉まで引き返していく。 が、何か忘れ物でも思い出したかのように立ち止まると、しょんぼりとしたまま付いて来る小暮を振り返った。 「小暮さあ。今回のやり方、オレは好きだよ」
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