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「赤血球の形が鎌みたいになっちゃう遺伝病ですよね……重度の貧血病を起こすっていう」
「そう、確かにこれにはそういうデメリットもあるね。だがメリットもあるんだ」
「マラリアを発症しづらくなるんですよね」
笈川は歩を止め、正解、と言った。
二人の距離は一メートルもない。
十センチ以上も背の高い笈川に掴みかかられたら、小暮はどうすることも出来なさそうだ。
「つまり、これは病気という一面を持ちながら、"状況によっては"種族をマラリア原虫から守る切り札ともなり得るんだ」
「はあ……」
「さて、ここで話題を変えよう。君はジャンヌ・ダルクについて知っているかい?」
「まあ少しは……イギリスからフランスを守った聖女でしたっけ。でも、どうして今こんな関係ない話をするんですか」
「パズルのピースを君に提供してるのさ。君がそれをどう組み立てるかで、その後の対応を決めるつもりだ」
相変わらず、笈川は笑顔のままのんびりとした調子だった。
この異常な状況でさえいつもの状態を保っているのが、さらに異常さを掻き立てる。
にもかかわらず、小暮には助かる方法はおろか、彼の意図すら掴めないままだ。
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