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「レジスタンスかな?」
小暮が口を挟んだ。
「彼らはバカじゃありません、単身でテレビ局ジャックなんてことはしないでしょう。やるなら、勝てる見込みのあることをします」
にべもなく却下されて、小暮は肩を落とした。
レジスタンスとはその名の通り抵抗組織のことで、ここでは大阪府、とりわけ自治隊に強く反発した武装勢力をさしている。
一部の右翼団体、噂では日本政府からも隠密裏に援助を受けているようだが、反乱の成功例はない。
肉体的・精神的には、所詮『ただの一般市民どまり』だった。
「よくその場で自治隊に射殺されなかったな」
笈川は目を患者に向けたまま、救急隊員との会話を再開させる。
「テレビ局ですからね、自治隊に踏み込まれて、銃やら何やらで大切な機材を壊されたくなかったんでしょう。
その点、救急隊を呼べば穏便にカタが付きますから。自治隊非難は揉み消されて、お咎めも無しです」
「大阪じゃ精神病者も健常者も一緒くたに裁かれるからな」
「実際、誰だって好き好んで自治隊なんかに接触しようとしませんよ。あれならヤクザの方がましですね、彼らには心がありますから。
……おっと」
思わず救急隊員は部屋を見回した。
条例の中で、自治隊批難は重罪と定められている。
その場にいた全員、未だに叫びながら体を揺する患者も含め、誰も彼を咎める者はなかった。
自治隊は、最悪だった大阪の治安を急速に回復させた。
しかし一方では、その過激なまでの手法と強い権力で、多くの府民はもちろん、日本政府からも反感を買っていた。
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