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歩き続けること数日。
僕達は谷間の道の手前にある森を目前に、夜を明かすべくキャンプをしていた。
ただでさえ暗い森の中を、わざわざリスクを冒してまで進む必要はないと判断したからだ。
森の中ではニア学園長が使える魔法も限られるし、賢明な判断だといえる。
「みんな無事でしょうかね?」
「んー……大丈夫よ。ていうか、もう16回目よ? その質問」
「……でしたかね」
パチパチッ、と、爆ぜる焚火に頬を照らされながら、僕は目を伏せがちに答えた。
闇夜に輝く月明かりと、草むらから響く虫の鳴き声。
心地よくもあり、寂しくもある。
「フェイト君。そろそろ寝なさい。見張りは私がやっておくから」
「お言葉に甘えます。ちょっと疲れてるみたいですし」
「短期間に色々あったものね。ゆっくり休みなさい」
その場に立ち上がった僕は、臀部に付着した砂を両手で払い、テントへ向け歩き出した。
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