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本来なら青々しい草原の草花は、東へ沈む夕日を浴びてほのかに赤みを帯びていた。
小高い丘を下りながら、遠く離れた場所に佇むサイフォリア王立アカデミーへ目を向ける。
一先ずあそこまで帰らなければならない。
ゴメス達の消息が分からない今、むやみやたらに動き回るのは良くないだろう。
無論、この地の何処かに彼らがいるのなら、今すぐにでも探しにいきたいのはやまやまだ。
しかし、攻撃魔法を使えない僕が長い旅路を乗り切れるはずもない。
――無力だね。
心細い。
独りはこんなにも心細いのか。
「早くアカデミーに行こう……」
感傷に浸っても仕方が無い。
夕暮れの丘を後にした僕は、街道を真っ直ぐにアカデミーへ歩いた。
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