12303人が本棚に入れています
本棚に追加
アカデミーには魔物を寄せ付けない結界が張ってある為、ウルフ達は蜘蛛の子を散らした様に逃げ去った。
僕は乱れた呼吸を整えながら、久方ぶりにアカデミーを見上げる。
建物の陰に隠れ、神樹が顔をのぞかせていた。
――ラクシア……
フッ、と、目を細めた僕は、一先ず学園長の許へ向かった。
校門をくぐり、昇降口を抜け、階段を一段ずつ歩いていると、上の階から下りてきた生徒達に出くわす。
だが、顔見知りはその中に無く、アカデミーを出発してから一年の月日が流れたのだと実感させた。
かつての級友達に思いをはせながら、やがて僕は三階にある学園長室に辿り着く。
黒い開き戸の前に立ちノックを若干躊躇っていると、突如勢い良く扉が開かれた。
「うわっ!?」
反射的に声をあげた僕は、目を丸くしている扉を開けた人物に視線を移した。
「……フェイト君?」
亜麻色の頭を可愛らしく傾げ、上目遣いで問い掛けてきたこの人物こそ学園長、ニア・パレットだ。
最初のコメントを投稿しよう!