親父

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翔の部屋はあたしの部屋の隣。そんなに広くないけど翔は十分だと言う。 「俺な、今までアパートやったん。こんな一軒家住めると思わんかった。」 「そんなに立派な一軒家じゃないけどね。」 「えぇねん。一軒家に住むことが俺の夢やってん。」 「夢もう叶ったじゃん。」 「ぁ…どないしよ…俺の夢終わってもうた。」 夢についてめちゃくちゃに悩む翔をよそにあたしはせっせとクローゼットに服をしまう。 ほとんど全てがパンクものだ。 「なぁ、兄貴」 「なんや?」 光流は昨日から翔を兄貴と呼ぶ。翔は‘兄貴’がすっかり気に入ったようで呼ばれるとかなり喜ぶ。 「ギターとかひけんの?」 光流が指さすのは青いギター。 「もちろん、弾けるで。」 「まじ?じゃあベースも?」 「弾けるからあるやん。」 うわぁ~すげぇ~と光流はハシャぐ。 「俺、向こうでバンド組んでたんや。こっちくるからぬけたけど。」 「バンドってパンク系だったでしょ?」 「当たりや!アヤ、お前エスパー伊藤やなぁ」 あんたをみりゃ誰だって分かるし、てかエスパー伊藤って誰!! 心の中でツッコミ。
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