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彼はあの人と繋ぐものだから、知っているのも分かっていたはずなのに
彼の口から、その事が吐き出されると必要以上のダメージを負った
彼に求めた激しさ、あの人はそれとは違う優しさをくれた
常に私を甘やかして、同じ医師という立場から支え、そして愛してくれた
手に入らない男を想い続けるより、目の前の手に入る愛を選んでしまった
それが私の罪と罰
ただ苦しかった…
彼にとっては一夜の過ちだったかもしれないけれど
私にとっては、あの夜から冷め切らない心と身体
あの人と同じ時間を過ごしてこようが、
何度も抱かれていようが
あれ以上に熱くなる事も
感じ乱れる事もなく
虚しさだけが蓄積されていくばかりで
それを薄々感じ始めていたあの人に応えられない自分
あの夜もそうだった…
重なった身体に、早く終わって欲しいと
そう思って目を閉じて
「………名を呼んで…」
私の名を囁いて揺れ動く
「早く………呼んで…」
偽りの吐息を吐き出してはみたものの、彼の名を頑なに拒んだ
激しさを増して突き動く彼が苛立っていたのも分かっていても
それが出来なかった
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