慕情

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「どうぞ」 バーテンがスッと差し出したロックグラス 琥珀色の液体が氷を包み込んで、互いにグラスを片手に無言のままの乾杯をした 一口含むと、一瞬のうちに広がるアルコール それが喉を通り胃まで落ちていく 貴方と離れていた時間、お酒が強くなった ねぇ、貴方は? 私と離れていた時間、貴方はどう過ごして生きてきたの? 心の中だけで、そう、呟いた 「この街で逢えるなんてな まだ…同じとこか?」 「今はね…貴方は?」 「あぁ、まだ離してもらえないよ」 「優秀なのね」 差し障りのない会話を摘んで、もっと奥に進みたいと それでも、この距離を縮める術が見つからなくて 「さっきはありがとう」 とりあえずのお礼を述べた 「口説かれてたんだろ 手癖が悪いで有名だからな」 口説くの言葉にドクンと反応して 「まだ口説かれてなかったわ 口説かれたい相手は…違うから…」 貴方を誘い込むように、またグラスの中身を飲み込んで ゆっくりと少しだけ身体を貴方に向き直った
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