慕情

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今度は彼が飲み込んで、私と対照になるように椅子を動かした 二人の距離は前よりも近くなって 彼の口元がセクシーに歪む 「口説かれるのは、しょっちゅうだろ」 彼の眼差しが妖しげに動いて 誘い込んだと、そう感じ取ったのに クルリと椅子を回してカウンターへ向いた身体 「もう一杯同じものを、お前は?」   目線はバーテンに移って、空のグラスを揺らす 簡単に墜ちてこない意地の悪い彼に 残りのグラスを飲み干して 「私にも、同じものを」 熱くなる身体に、悪くないかもと 彼の思惑に気付きもせずに アルコールと、彼との会話を楽しんだ 四杯目のお代わりをした頃には このまま酔ってしまおうか 彼を酔わせてしまおうかと 考えていた私に 「別れたんだって」 突き刺さった棘は、呼吸を苦しくさせた
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