劣情

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エレベーターから降りると、少し離れた所に受け付けが設けられていた 二人組みの女性の係に、届いてある書類を差し出した 名を確認して、ファイルとネームプレートを受け取る チラッと盗み見した用紙に、彼の名前を探すも マジマジと見る訳にもいかずに、その場から離れた まだ開催されていない会場の、開け放たれた両扉 数人の男性の、数歩後ろに続いて中に入る 談笑する空間 まばらな空席 後方からぐるっと見回して、視線が自然に止まった 隣に座った男性と親しそうに話す姿 この街から離れる前よりも、ずっと大人の仕草 でも、何一変わらない彼の魅力 それだけで目眩がしそうなくらい 彼の席より後ろの 横顔が望める場所に座った 資料を眺める振りをして、彼の姿を眺め 総て、この日の為に そう、貴方に逢うべくして選んだ 
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