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産婆は続けて聞きます。
「いつ頃、どのような異変に気づきました?」
父親は答えます。
「だいたい一月前くらいです。今まで純粋におおらかで開放的な子だったのに、急に部屋に閉じこもり外に出るのを拒み出しました。勉強はしっかりとしていたので、様子をみてたのですが日に日に顔色が悪くなり、心を閉ざしていきました」
産婆は不思議に思いました。
「急にですか?何かきっかけがあった訳でもなく」
父親は答えます。
「きっかけの検討はついてます。おかしくなった頃に、町でもプラタナスの評判が落ちるような話しをする輩共が出てきましたし、プラタナスはプラタナスで夜に懺悔を繰り返しているのですよ。父親としては口に出したくない事柄が原因でしょう」
すると、今まで黙っていた母親が急に叫びます。
「プラタナスを悪く言う噂なんて全て嘘よ!彼女の美しい髪と才能に対する嫉妬よ!なのに、何ですか!貴方までプラタナスを悪く言うなんて!貴方がそんな目でプラタナスを見るからこんな事になったのよ!原因は貴方だわ!!」
産婆は慌てて
「お母様、落ち着いて下さい。プラタナスが安心して眠っているのですから」
その言葉を聞き母親は泣きながら小さな声で
「私の大切なプラタナス、私の宝物のプラタナス…」
と繰り返し呟きながら祈りを再開しました。
そんな母親の様子をみて、父親はうんざりとした表情をしてボソッと言います。
「妻は、プラタナス、プラタナスと口にするがプラタナスの髪ばかりを愛している。異常なのは妻だよ。何故そこまで執着するかね、プラタナスを本当に想うなら都合の良い所だけでなく悪い部分も認めるべきさ」
母親は聞こえぬふりを、父親は小言を言っています。
産婆はため息が出そうなのを必死でおさえました。
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