第1章 小麦の町

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メルシア連邦王国はこの国の中心部で最大の地域、メルシア地方の勝利によってつけられた。 復興も進み、近年戦禍の傷跡は見る影もなくなってきている。 しかしその一方で、戦争時あんなにも尊敬の眼差しで重要視されてきた武器屋や兵士は、今では収入困難な職業になってきているのも事実。 店を持たない武器屋や、軍や貴族兵にも所属していない兵士は特に厳しい。 仕事が少ないため、まとまった金を得ることができず生計を立てることが困難なのだ。 もっともセリアのように、お金を持っていても店を開かず旅をする特別例外の武器屋もいたりするわけなのだが。 「それでネルフ伯爵。今回また呼んで下さったのは、どういったご用件でしょうか? 」 セリアはわざとへりくだった言い方で口を開いた。 「ああ、そうだったな。実はセリア君から買った武器があまりに良くてね。盾も欲しいと考えていたのだが、どうかね。剣同様、我が兵に適した高貴で雅なものがいいのだが」 ネレフはご機嫌だった。大きな巨体を大きく揺らしながら、まるで自信に満ち溢れた面持ちで踏ん反り返っている。 .
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