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セリアは、唇を咬んだ。
未だ綺麗なままの、実践すらしたことがないような武器の、良し悪しなんて分かるわけがない。
武器は使ってこそ、価値がわかるのだから。
武器の何足るかも知らない奴らに、良し悪しなんて言われたくないのだ。
そう内心では頭が沸騰するほどの怒りを感じながら、それでもセリアの顔色は決して変わりはしない。
「あら、そんな滅相もない。伯爵の“大勢の”兵あっての武器。“膨大な”兵力あっての剣ですわ」
もちろん、ただいいなりに褒め称えるほどセリアの性格も良くはない。
過大すぎる評価に、さすがの伯爵も顔を引きつらせた。
しかし、弁解の余地を与えぬままに彼女は話を進める。
「盾、で伯爵のお気に召すものがあったかどうか……。後日、きちんと確認してからまた連絡に来ます」
今すぐに買いたかったのか、少し戸惑いを見せた伯爵だったが、渋々にも頷く。
しかし、
「絶対だぞ、誰よりも先に私の元に盾を用意してくれ」
と、念押しと言うように要求する。
その必死ぶりに少し疑問を持ちつつも、速くこの場を納めたいという一心から、セリアは早巻きに事を進める。
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