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「貴方のやっていることは、ただの一方的な暴力でしょう!! 」
周りを取り囲む人々が、驚きに満ちた言葉で騒ぎ立てる。しかしその大半は、恐怖の渦で溢れかえっていた。
目の前の男は、眉をつり上げあからさまに不快感を顕にしている。何をやっているのか、と少女は自身を嘲笑した。
ただ、許すことはできなかったのだと。
見逃すほど、自分も心を捨てたわけじゃないと。
覚悟を決めて、目の前の男を少女は容赦なく睨み付けた。何が面白いのか、男の悲痛なまでの笑い声がその場に響く。
男は笑うのをやめると、情けなのか侮辱なのか、少女に憐れみの目を向けた。
そして……
まるで時を告げる鐘のように甲高い悲鳴があがる。
その悲鳴とほぼ同じ瞬間、男の持っていた“モノ”が真っ直ぐに少女へ降り下ろされたのだった。
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まるで、真夏同然の暑さだった。
季節は秋の始め。いまだ残暑が厳しいのは仕方ないにしても、この日の暑さは尋常ではなかった。地面はジリジリと熱気が降り注ぎ、目に見えるほどの湯気が立ち上っている。季節外れの蝉の鳴き声が、その暑さを更に引き立てた。
茶色系で統一された、質素ながらも清潔感のあるワンピースを身に付けた少女ーーセリア=アーチャーは眩しそうに手をかざして空を見上げる。
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