第1章 小麦の町

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メルシア王国南東シリア地方。 小麦の生産が国内生産量の半分も占めていて、パンが主食のこの国では重要な資源地域の一つ。 穏やかな風景同様、治安の方も他都市と比べると比較的平和で知られている。 シリアの人々の多くは小麦農家の人々で、日夜働く農夫の為に、酒場が多いのも特徴。 小麦から作られたビールは格別の旨さだと評判で、休暇にシリアを訪れる人も多い。 ただし、土地の買収を生業として農民からお金を稼ぎとる貴族のお陰で、揉め事がないわけでもなく。 セリアは自分がこの地方に来た本当の理由を思い出し、今の現状に顔が沈む。 彼女が旅の途中この場所に立ち寄ったのは、仕事をするわけでは決してない。 とどのつまり、休暇である。 とりあえず、仕事をする気はさらさらなかったのだ。 それが、来た途端に一番会いたくなかった貴族に依頼され、渋々にもその依頼を引き受けてしまったのがいけなかったのだ、と彼女の後悔は止まぬばかりである。 一度仕事をすればまた次と増えるのは目に見えていたというのに、それでも断らずに仕事をし続けるのは彼女にとって仕事柄、性であり変なプライドでもあった。 .
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