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自業自得であるから無理矢理割り切ったにせよ、何はともあれ今のこの状況は彼女の休暇がほぼ全て仕事に変わってしまうということを意味しているわけで。
まだそれだけならいいんだけど、と彼女は半ばやけくそに荷馬車を止める。
そして、
「相手さえ、よければねぇ……」
目の前の建物の主に向かって悪態をついた。
見上げなければならないほどの、田舎にしてはやけに大きすぎる屋敷。
とりあえず無駄な物を沢山付けてみました、と言わんばかりのその風変わりな場所に、セリアは最初に来た時と同じ気味の悪い肌寒さを感じて思わず目を逸らした。
何よりおかしいのは、屋敷の周りの庭である。全く特徴も趣味も違うただ目立つだけの彫刻が、所狭しに置かれていた。
例えば、庭園の入り口に並ぶのは可愛らしい女の子が描かれたマトリョーシカ。しかしその横には、何の笑いを狙ってか堂々たる迫力のモアイ像が置かれていた。
この様子だと、その彫刻の価値など到底分かってないに違いないが、置き方もバラバラで統一性の欠片もない。まるでゴミ捨て場のようだとセリアは感じた。
入るのさえ躊躇する彼女だったが、止まった所で意味はないと周りをできるだけ見ないようにして足早に庭を通る。
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