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そして屋敷の扉の前まで来て、
「…………よし」
一人、空虚な気合いで持ち直し、中へと入っていった。
*
床一面に赤絨毯、上には豪華なガラスの装飾。見渡す限りに飾られた、高価そうなコレクションの数々。
一目でここの主人が貴族であると分かるように作られた、いかにもな屋敷である。
しかし少し見れば大抵の商人は呆れるだろう。大した品なんて一つもないのだから。
廊下を歩きながら、何度セリアは挫けそうになったことか。
他よりさらに凝った扉を開けると、ガラスケースに囲まれた部屋にこの屋敷の主人たる男は、大きな巨体に似合わない……確か随分前に流行した首がキツそうな服装を身に付け、置かれたコレクションを楽しそうに眺めていた。
「ああ、来たかね。いやぁ、ご無沙汰してるね、セリア君」
セリアに気づいたのか、顔を向けて男は気味の悪い笑みを顕にする。
「いえ、これが私の仕事ですから。……こちらこそ、前回の武器を気に入って頂けたようで嬉しい限りです。ネレフ伯爵」
セリアも笑いながら答えた。
だいぶ笑顔にしては口元が引きつってはいるが。
仕事上の愛想笑いは彼女の得意とするところだが、休日がなくなったことによる連日のストレスは、予想通りほぼ限界値に達していた。
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