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 困りきり、鬼島は明理の瞳の奥を覗き込んでみたが、ヒントや判断材料になるものは何も得られなかった。 「……怖いものは感じるけど、決心するしかないな。私の提案した賭けに対し、明理ちゃんがすんなり応じたという異常。一種の謎かなあ、これは」  鬼島がテーブルの下に置いた鞄を探り、中から筆記具入れを取り出すと、明理はタイミングを見て、こう尋ねた。 「逆に、鬼島さんはどうして先生が来ないと思うの?」  続けて教科書類を取り出そうとした鬼島の手が止まる。顔を上げ、明理の不思議そうな目を見つめた。 「それは……、また明理ちゃんらしい質問だな。うん、やはり優秀な人は違う」  硬直が解かれ、鬼島はテーブルの上にノートや教科書、参考書などを乗せた。いずれも数学のものだ。  明理は首を横に振って、少し顎を引いて上目遣いを作り、言う。 「優秀なんて、そんな。私、学校の勉強が出来るだけだよ。成績が良いだけ」 「それで充分じゃないか」  呆れたように息を吐き、手に取ったシャープペンの頭を数回ノックした。ノートを開け、参考書を開け、早速数字や文字をノートに書き列ねていく。
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