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「明理ちゃん的には、気付いてない云々じゃなく、本当に気にならないだけなんだろうけど。私はそんな明理ちゃんのことがたまに羨ましく、また疎ましくもなる」
「私、鬼島さんに悪いことしてたのかな?」
焦ったような口振りで、しかし笑顔は絶やさない。口元を手で隠し、明理は困惑を表現した。そんな明理を眺めつつ、鬼島は満足げに言う。
「私だけじゃないさ。海老池ちゃんも似たような感じだったろうよ。明理ちゃん、鈍いって訳じゃないんだが。……寧ろ、鋭過ぎて周りが見えてないんだろう。偏った表現になるが、明理ちゃんの理系的な部分がそこだ。まあ、明理ちゃんの頭なら、その気になればいつでも理系に移ることができるだろうけど。そんなことはどうだっていいな」
「き、鬼島さん、勿体振らないでよ。気になるよ」
そう言って、鬼島に泣きつく明理。目の中には、よく澄んだ、綺麗な瞳がある。それに対して、斜に構えた鬼島の、本心が見えてこない口調と表情。どんな時でも人をからかおうとするような、嫌らしい言葉。
「可愛い声を出すんじゃない。台詞も可愛い。顔も可愛い。そのくせ天然か。愛(め)で殺したくなってくる」
「《愛で殺す》なんて動詞、初めて聞いたよ」
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