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 ショートカットの茶色い髪が乱れるのも厭わずに、やや冷たさのある机にうつ伏せになる。そのまま顔を横向けて、部屋のドアをじっと見つめた。  だが、ドアは変わらず閉じたままで、部室には明理以外に誰一人やって来ない。 (誰かと一緒に来ればよかったかな。鬼島さんと図書館に寄ってから、とか)  明理たち二年生の教室があるのが五階、文芸部室は六階で、図書館は地下にある。校舎の構造からして「寄る」ことはできないはずだが、明理はそう表現した。  明理は振り返り、真後ろの壁に掛けられた時計を見た。二本の針は、四時三十五分を示していた。 「教室はまだ掃除中かな。ちょっと早すぎたな……」  鞄を椅子の下から机に上げて、明理は席を立った。鞄から財布を取り出し、図書館で本を借りるための生徒証を抜いて、それをぎゅっと握り込んだ。  ドアに近づいて手を伸ばす。その時、ドアがひとりでに開き、向こうにいた一人の少女と目が合った。  釣り目が印象的な、整った顔立ちの少女。だが、目の下には黒い隈があり、肌が色白なこともあって、とにかく不健康そうに見える。黒い髪には癖やハネがついており、身長は明理よりもやや高い。少し驚いた様子で、少女は後ろ手にドアを閉めた。 「……なんだ、明理ちゃんか。来てたのか。いつも早いな」
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