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「そうだなあ、じゃあ、これから一緒に行こうか? 図書館」 「え?」  不意打ちのような鬼島の言葉を食らい、気張りのない声を上げてしまう。そんな明理のことを尻目に、鬼島は続けて言った。 「図書館、行くところだったんでしょ? 読む本がないから。読む本と言うか、明理ちゃんの場合は、読んだことのない本、かな」 「見透かしているなあ……。鬼島さんの明晰さが冴えるのって、こういうどうでもいいような時だよね」  明理は笑顔を絶やさずに言ったが、頬を走っていく一筋の汗は隠しきれなかった。 「普段は落ち着いてる明理ちゃんでも、こんな風に動揺するのかと思うと。何か、少し得したような気分だ」  ひひっ、と特徴的な声が出た。人をからかう時に鬼島がよく使う、わざとらしくて漫画みたいと評される笑い声だった。 「私じゃなくて、雀野先生ならよかったのにねぇ。あの人、頼んでもない本を馬鹿みたいにたくさん持って来るし。真面目と言っていいのやら」  意地悪そうな粘着質のある笑みをにんまりと浮かべて、鬼島は言った。明理の方も、必死になって笑顔を作る。 「そんなこと思ってないよ。私、鬼島さんのこと好きだし」
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