残り90日

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残り90日

困惑する私は卓郎や夏子にも打ち明けられず に、1人悩み続ける日々が続く。 不思議な夢を見るようになって1ヶ月程が過ぎ た5月の夜。 「じゃあ明日9時な。寝坊すんなよ」 そう言い残した卓郎は帰って行き、心弾ませる 私の足取りは軽く、玄関に入ると一気に階段を 駆け上がった。 明日は夏子と卓郎の兄一郎(いちろう)の4人 で、楽しみにしていた苺がりに一泊で出かけ る。 鼻歌を歌いながら顔にパックをして、乾くのを 待ちながら荷物を確認。 「あぶない、あぶない。これを忘れちゃいけな いでしょ」 1人でツッコミ手にした袋を見つめて、買った ばかりの新しい下着にしまりなくニヤける。 ずっと、夢の事が気になり心にモヤモヤを抱え て過ごしていたから、せめて明日くらいは大好 きな卓郎と、余計な事は考えずに思いっきり楽 しみたい。 苺農園に行くまでの道のりは、けっこう景色も 綺麗だから、その風景を思い描いてワクワクす る。 「オヤツはこれだけで足りるかな?まっ、無く なったら途中で買えばいっか。よし、美容に悪 いしもう寝よう」 誰に話す訳でもなく独り言を並べて、まるで遠 足前日の子供のようにはしゃぐ私は、11時前 には布団に入り、真っ赤に熟した甘い苺を想像し ながら眠りについた。 そして今宵もまた、夢の扉が開かれる。
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