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プロローグ
ジリジリと焼け付くような真夏の太陽。
額から吹き出た汗が首筋に流れる。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
夢中で走る私は、差し掛かった交差点の赤信号 など確認もせずに渡って、既に引き返せない距離 まで進んだ所で聞こえた音で我に返る。
ブッブッブッブッブー………。
必要に迫るトラックのクラクションで気づいた 時には遅かった。
「あっ……」
と声を上げる暇もなく跳ねられた私の体が宙を 舞う。
だけどその時、私を庇うようにして一緒に跳ね られた人がいた。
叩きつけられたアスファルトに広がる、生暖か く赤黒い血。
「あいらぁぁぁ……………」
薄れゆく意識の中で、遠くから私を呼ぶ兄の叫 び声が耳に届き、背を向け隣に倒れる黒髪の人 物が見えた。
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