夢の始まり

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「じゃあ私は家庭教師のバイトがあるから。ま たね」 慌ただしく帰って行く夏子の背中を見送る私 に、 「この後どうする?」 先に立ち上がりポケットから車のキーを取り出 した卓郎が、トンと机に拳をついた。 「なんか、まだ頭がスッキリしないの。だから 今日は真っすぐ帰ろっかな」 座ったまま見上げた私は、答えた後に立ち上が り、頷く卓郎と共に車を駐車してある場所へと 向かう。 風がほとんどない昼下がりのキャンパスを歩き ながら、ふと目にとまった花壇の花。 「ねぇ、卓郎。あれって何て花かな?」 見た事がない花が何故か気になって、何となく 尋ねたけど。 「花?そんなの俺が知る訳ないだろ?」 やっぱり卓郎は知らなくて。 「なんか……、可愛い」 何気なく近づいて触れてみる。 薄いピンクと水色の花が、寄り添うように咲い ていた。 理由はわからない。だけど急に欲しくなって。 「卓郎お願いがある」 「…ん?……」 「花屋さんに連れてってくれない?」 「あ、あぁ。別にいいけど」 私達は、ここから車で10分程の所にある花屋 に、まるで引き寄せられるように向かった。
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