夢の始まり

9/28
前へ
/150ページ
次へ
「着いたぞ」 車が店の前で停車した。 「じゃあ、ちょっと行ってくるね」 降り立った場所は、まるでログハウスを思わせ る丸太作りの小さな花屋。 両脇にプランタ-の花が置かれた木の階段を、 3段程上ると店の入口がある。 ミシミシと木の音を響かせながら、大きなベル のついたドアを開けると、 カランカラン………。 心地よい鐘の音が耳に届き、ふわっと漂う生花の香が鼻を掠める。 「いらっしゃいませ~」 同年代くらいのエプロンを身につけた女性店員 が、思わずニコッと返したくなるような優しい 笑顔を向けて、私を店内に招き入れた。 名前もわからない小さな花を、キョロキョロと 探していると、 「何かお探しですか?」 店員に声をかけられて。 「…えっと……」 どう説明しようかと困り果てた私は、 「…あっ……」 さっき撮ったばかりの写メを思い出す。 「あの……、この花なんですけど、ここに置いて ますか?」 携帯を差し出し画像を見せると、「これはニゲ ラですね」店員の口から簡単に花の名前が飛び 出した。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加