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「霧の中の、恋人?」
無意識に口から漏れた言葉。
不意に浮かんだのは、ついさっき夢で見た彼、 ムトの事。
他の事はハッキリ覚えているのに、彼の顔だけ 靄がかかって思い出せない。
正に霧の中の恋人。
店員は更に説明を続ける。
「アルカロイドという毒性が含まれているので 種の取り扱いには注意が必要だそうです」
「えっ?!毒があるんですか?あんな小さくて 可愛い花なのに……」
3㎝ほどの本当に小さな花なのに、あまりにも 意外で驚いた私は、どこか信じられなくて。
だけど店員は、
「それがあるんですよね」と困った顔して、
「でも、花言葉は素敵なんですよ」
と付け加えた。
「花言葉は何なんですか?」
普段、花にも花言葉にも興味がなかった私が、 不思議とニゲラと呼ばれる花が気になって仕方 ない。
「花言葉は、夢で逢いましょう。ねっ?素敵で すよね?水色や薄いピンク、白色の花を咲かせ るんです」
この店員は、本当に花が好きなんだろう。
説明をしている間、終始目を輝かせていた店員 は、体全体から花を愛する優しさが滲み出てい た。
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