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「ただいま、ふぁ~」
玄関を入るなり欠伸をする私に、出迎えた母が 呆れた声を漏らす。
「帰る早々まず欠伸なの?この子は……」
「ごめん。なんかやたら眠くなるんだ。春のせ いだよ、きっと」
笑いながら階段を上がる背中に、
「もうすぐ夕飯だからね」
母の声が届いた。
「駄目だ……」
異常な眠気に襲われて、このままでは夕飯の前 に眠ってしまう。
そう思った私は、先にお風呂に入って目を覚ま す事にした。
ポチャン、と体を沈めたバスタブ。
乳白色の入浴剤が混ざるお湯が、静かに小さく 波打って、ふと思い出したのはニゲラの花言 葉。
「夢で逢いましょう、か……」
ポツリと呟きながら思う。
―――あの夢、また見れないかな。
体が芯まで温まったせいか、ついまたウトウ トして、体がズルズルと沈みかける。
「うわっ!」
ハッと気づいて慌ててお湯から飛び出し た。
―――危なかったぁ……。
「はぁ……」
ホッとしてシャンプードレッサーに手をつきな がら、深く息を吐き出した私の心臓は、未だに ドクドクと音を立てている。
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