夢の始まり

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タオルで髪をふきながらリビングに向かうと、 ソファーに腰を下ろしてリモコンを手にした。 「あら?先にお風呂済ませたの?」 母がキッチンから顔を覗かせて、 「ちょうど良かったわ。今呼びに行こうと思っ たの。ご飯出来たわよ」 盛り付けた皿をテーブルに置いて、ご飯をよ そってくれた。 「いただきます。お兄ちゃんとパパはまだ帰ら ないの?」 真っ先に箸をつけた青椒肉絲を口に運びながら 時刻を確認。 もうすぐ長針が7時半を指す所だった。 「お父さんは今日も残業だって。哲也はもう帰って 来ると思うけど……」 母が答えるのとほぼ同時に、 「ただいま~。腹減った~」 脳天気な兄の声が飛び込んで来た。 「お帰り」 箸を止める事なく食べ続ける私を見て、兄は不 満の声を漏らした。 「なんだよ、亜衣羅。待っててくれてもよく ねぇか?先に食いやがって」 「だってお腹空いてたんだもん」 「けっ、可愛くねぇな。それが命の恩人にする 態度かよ」 ムッとした顔のままリビングを出た兄は、手を 洗いに洗面所へ向かう。 「ごちそうさま。お腹がいっぱいになったら、 また眠くなっちゃったよ」 食べ終えた私は食器を下げて、煩い兄が戻る前 に欠伸をしながら2階に上がった。
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