夢の始まり

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大きな欠伸を1つして、携帯片手に階段を降り た。 リビングに入ると、長い足を組んだ兄がソ ファーに座り新聞を広げていた。 「やっと起きたのか亜衣羅。じゃあ、パパはも う行くからな」 トイレから出た父が後ろからやって来て、母か ら受け取ったお弁当を鞄にしまいながら、私に 声をかけて玄関に向かう。 「あっ、パパ行ってらっしゃい」 父を送って兄の隣りに腰をおろすと、 「なんだよ亜衣羅。まだ寝たりねぇの?はっ ……」 唖然とこちらに視線を向けた兄は失笑した。 「まだって何よ。自分だってどうせ、ついさっ き起きて来たんでしょ?」 憎まれ口をたたく私に届いた呆れた口調の兄の 声。 「あのなぁ、俺はレポート書いてて深夜2時に 寝たんだぞ。辞書を借りようと思って部屋行っ たらさ、まだ8時半だってのに布団も着ないで 寝ただろ、お前」 「……えっ?!」 「…ったく。何時間寝りゃ気が済むんだ?誰が 布団かけてやったと思ってんだよ」 溜息をはく兄は、畳んだ新聞を私の膝にバサッ と投げると、 「あぁ、だりぃ~」 首を回しながらダボタボのスウェットを引き ずって、2階へと上がって行った。 その背中を見つめながら、私はまた小さく欠伸 をする。
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