夢の始まり

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「昨日はごめんね。なんか私、ぐっすり眠っ ちゃったみたいで」 乗り込むと同時に口を開き、文句を言われる前 に先に謝る。 「…ったく。ちっとも返事こないし、迎えに来 ていいもんかどうか迷ったよ」 それでもやっぱり軽めの文句が卓郎の口から吐 き出されて、 「だからごめんて……ふぁ~」 もう1度謝ろうと口を開けば思わず欠伸が出て しまい、誠意のない謝罪になってしまう。 「お前なぁ、あんな早く寝たのに、まだ寝足り ないのか?」 眉を寄せる卓郎は兄と同じ事を言った。 「十分寝たんだけどなぁ……ふぁ~」 そう言ってる矢先にまたしても飛び出した欠伸 に、 「昨日から欠伸ばっかしてんな。着いたら起こ してやるから寝てていいぞ」 内心呆れているくせに、優しい言葉をかけてく れる卓郎は、さりげなく私の頭を撫でて車を走 らせた。 「じゃあ、お言葉に甘えて」 少しだけシートを後ろに倒して、運転する卓郎 の横顔に微笑むと、ゆっくりと瞼を閉じた私の 耳に届いた卓郎の声が、次第に遠退き意識は夢 の中へ。 「亜衣羅、マジでもう寝たのか?おーい、亜衣 羅………………」 「……………アイラ」
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