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「美味しかったぁ。ごちそうさま」
「ほんと美味かったな。また来ような」
講義が終わって夏子と別れた後、軽くドライブ をして、すっかり日が落ちた7時頃、立ち寄っ たイタリアンの店。
2時間かけて会話と食事を楽しみ、美味しい物 を食べてお腹も満腹で、満足げに微笑む私に卓 郎も嬉しそうに微笑み返す。
「どうする?俺んち寄ってくか?」
「うん、そうしよっかな。あっ、でも……」
ふと思い出したのは出かけの母の寂しそうな 顔。
「ごめん、やっぱり今日は帰る。週末にゆっく り泊まりに行くから。ごめんね」
事情を説明して家の前まで送ってもらい、軽く 唇を触れさせて車を降りた。
「週末は久しぶりに亜衣羅の手料理が食べたい な」
「オッケー、腕に頼をかけて作るから、楽しみ にしてて。じゃあ、おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
窓越しに会話をして走り去る車を見送ってか ら、
「ただいま~」
と必要以上に明るい声で玄関を開けて、脱 ぎ捨てるようにミュールを飛ばしてリビングに 向かう。
「あら、亜衣羅。デートの時はいつももっと遅 いのに。今日は随分早いのね」
なんて言いながらも嬉しそうな母の顔を見て、 帰って来て良かったと思いながらソファーにいる父の隣に座った。
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